徳島の伝統「ねさし味噌」を守り続ける醸造所を訪ねて

徳島県には、古くから受け継がれてきた独特の発酵食品「ねさし味噌」があります。一見すると八丁味噌に似ているものの、味わいは全く異なるこの地域の宝物を、今もなお丁寧に作り続けている2つの醸造所をご紹介します。

目次

江戸時代から続く伝統の味「三浦醸造所」

江戸時代から続く老舗醸造所、三浦醸造所。現在の五代目当主が自ら建てた蔵で、徳島発祥と言われる「ねさし味噌」と「ねさし醤油」を国産材料にこだわって製造されています。

私が最初に訪れたきっかけは、「甘酒が美味しい」という評判を聞いたからでした。
しかし、実際に足を運んでみると、五代目当主の温かい人柄に触れることができました。
醤油、味噌など、あれもこれもと惜しみなく味見をさせてくださり、それぞれの味の違いや製造へのこだわりを丁寧に教えてくださいました。

長い歴史の中で培われた技術と、現代にも通用する品質への追求。
そこには職人としての誇りと、地域の食文化を守り続ける使命感を感じることができました。

三浦醸造所

阪神淡路大震災を乗り越え、伝統を繋ぐ「井上味噌醤油」

井上味噌醤油さんには、特別な物語があります。
1995年の阪神淡路大震災で蔵が被災した後、寺や神社を手掛ける宮大工の手によって新たな蔵が建てられました。
この蔵の特徴は、現代的な設備に頼らない伝統的な構造にあります。

冷房などの人工的な温度調節は一切使わず、漆喰仕上げの壁と自然に空気が循環する構造で、味噌にとって最適な環境を作り出しています。
さらに、徳島県の樽職人によって修理を重ねながら長年使い続けられている樽が、独特の風味を生み出しているのです。

こうして丁寧に作られた味噌は、柔らかい塩味が特徴的で、料理の主役にも脇役にもなる深い味わいを持っています。様々な使い方ができる万能な調味料として、多くの料理人からも愛されています。

井上味噌醤油

「ねさし味噌」とは?その名前の由来と魅力

「ねさし味噌」という名前の由来は諸説ありますが、味噌の表面に付く白い酵母のカビを「根差し」と呼んだことから、この名前が付いたと言われています。
また、長期間じっくりと発酵させることで、味が「根差す」ように深く染み込むという意味も込められているとされています。

両醸造所で作られている「ねさし味噌」は、見た目こそ八丁味噌に似ているものの、味は全く異なる個性を持っています。
八丁味噌の濃厚で力強い味わいに対し、ねさし味噌はよりまろやかで優しい風味が特徴です。
この独特の味わいは、徳島の温暖な気候風土と長年培われた独自の製法によって生まれる、まさに土地の味なのです。

最後に

今回ご紹介した内容は、実際に足を運んで感じた魅力のほんの一部です。
より詳しい情報は各醸造所のホームページでご確認ください。

徳島の伝統的な発酵食品「ねさし味噌」。
ぜひ一度、その深い味わいをお試しください。きっと、新しい食の発見があるはずです。


※各醸造所への訪問を検討される際は、事前にお問い合わせすることをおすすめします。

東京都在住 穂高

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次