親子で味わう名古屋名物・きしめんと和食文化の魅力

2025年10月17日

一杯のきしめんに込められた、日本の心

きしめんを口に運ぶその瞬間、そこには日本が育んできた和食文化と礼儀作法が静かに息づいています。
平たくつるりとした麺、香り高い出汁のつゆ、そして箸を使って丁寧にすくい上げるその所作——。
何気ない日常の食事の中に、実は日本人が大切にしてきた「食の心」が詰まっているのです。

きしめんは、愛知県、特に名古屋を代表する伝統的な郷土料理です。

その歴史は江戸時代にまで遡り、元々は三河地方（現在の愛知県刈谷市）の名物として文献に記録されています。
その後、名古屋で独自の発展を遂げ、尾張徳川家の伝統料理にもなったという由緒ある一品です。

きしめんの特徴は、なんといってもその平たく薄い麺。
幅広でなめらかな食感と、つるりとしたのど越し、そして適度な歯ごたえが魅力です。
まろやかで出汁の効いたつゆと相まって、日本人の味覚に深く響く優しい味わいを生み出しています。

熱いつゆをかけて食べることが多いため、気温が下がる10月以降の秋・冬は特においしく味わえる季節です。

きしめんを食べるとき、実は日本の和食文化や礼儀作法が自然と子どもたちの心に伝わっています。

家族みんなで食卓を囲み、手を合わせて「いただきます」「ごちそうさま」とあいさつすること。

これは食べ物への感謝や、作ってくれた人、育ててくれた自然への敬意を表す、日本ならではの美しい習慣です。
きしめん一杯を通して、子どもたちは食事の大切さを感じるきっかけを得られます。

日本の食文化に欠かせないのが、お箸の使い方です。

きしめんは平たい麺でお箸でつかみやすく、小さなお子さんでも比較的上手に食べることができます。
麺をすくい上げて、つゆと一緒に味わうことで、「きれいに食べる」「残さず食べる」といった和食の礼儀も自然と身につきます。

きしめんは、和食の基本形である「一汁三菜」の考え方にも通じています。

麺とつゆに、薬味や具材が添えられることで、バランスの取れた食事になります。

こうした食事のバランス感覚も、幼い頃からの食体験を通じて育まれていくのです。

きしめんを家族で楽しむひとときは、親子で和食の文化と礼儀を学ぶ大切な時間になります。

何気ない食事から、思いやりや感謝の気持ちを育てることができる——それが和食文化の素晴らしさであり、きしめんが持つ教育的価値なのです。

実は、10月26日は「きしめんの日」として制定されています。

食欲の秋である10月と、きしめんのつるつるした麺が特徴であることから「2(つ)6(る)」の語呂合わせで、愛知県製麺工業協同組合が制定しました。

また、愛知県にはきしめん普及委員会があり、きしめんという食文化が受け継がれていくために様々な活動を行っています。

地域の食文化を守り、次世代に伝えていこうという取り組みは、和食文化伝承の大切な一環です。

一杯のきしめんには、日本が大切にしてきた食文化の心が詰まっています。

平たい麺をお箸で丁寧にすくい上げ、「いただきます」と手を合わせて味わう——その何気ない所作の中に、感謝の心や礼儀作法、そして季節を感じる感性が育まれていきます。

和食文化の継承は、特別なことではありません。
家族で食卓を囲み、地域の味を楽しみ、その背景にある物語を知ること。

そうした日常の積み重ねこそが、次世代へ文化をつなぐ大切な一歩になるのです。

この秋、ぜひ親子できしめんを味わいながら、日本の食文化の豊かさを再発見してみませんか？

岡崎支部　りえ

よかったらシェアしてね！