足元の春をいただく

庭の「つくし」と、春の苦味に隠された知恵

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春の訪れを知らせる、小さな芽吹き

ふと庭の隅に目をやると、冬の間に固く閉ざされていた土を押し上げ、ひょっこりと「つくし」が顔を出していました。
春の日差しを浴びて背比べをするその姿は、まるで大地が深呼吸を始めた合図のようです。

「あぁ、今年も春が来たのだな」
そう感じさせてくれるつくしは、古くから日本の春の食卓を彩ってきた大切な「初物」のひとつです。

春には春の理(ことわり)がある

昔の人は、春には春の理(ことわり)があると考えてきました。
冬のあいだ内側に閉じていたものが、春になると外へ外へと動き出す。
土の中の芽も、山の草木も、そして私たちの体も、同じように目覚めていく季節です。

和食の世界にある「春の皿には苦味を盛れ」という言葉も、そんな春の理に寄り添った知恵。
つくしの持つほろ苦さは、冬の間に眠っていた心と体をやさしく揺り起こし、春へと切り替えてくれる味なのかもしれません。

手仕事がつなぐ、食の記憶

一本一本、丁寧に袴(はかま)を取る時間。
それは、和食文化が大切にしてきた「食材と向き合う時間」そのものです。

家族や地域の人たちと手を動かしながら交わすおしゃべりも、また季節の楽しみのひとつ。
こうしたひとときが、食の記憶として静かに受け継がれていきます。

春を味わう、やさしい伝承の一皿

・佃煮(卵とじ)
苦味がやわらぎ、ご飯の進むやさしい味わいに。

・天ぷら
あえて袴を取らずに揚げると、野趣あふれる春の香りを楽しめます。

足元の春を、暮らしの中へ

庭のつくしを摘み、袴を取り、台所に立つ。
そんな何気ない日常の中にこそ、和食文化の豊かな伝承が息づいています。

今週末は、足元の小さな春を探してみませんか?

豊後大野支部 橋本 みゆき

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