あちこちの田んぼに水が引かれ、鏡のように光を反射するまぶしい景色。
私が暮らす三重県松阪市は田んぼどころで、今、至る所で田植えの風景が広がっています。
お米という名に込められた「八十八」
お米という漢字を分解すると、「八十八」という数字が浮かび上がります。
これは、一粒の種からお米が収穫されるまでに、八十八回の手間がかかることを意味しています。
昔の人は、一粒のお米にかけられる多くの工程を尊重し、この字を当てたという説があります。
私たちが口にしている一杯のご飯には、八十八のステップが詰まっているのです。
田植えは何手目?
では、田植えは八十八の手間のうち、何番目にあたるのでしょうか。
実は、田植えは二十手目から三十手目前後にあたると言われています。
それまでには、土を耕す「荒起こし」や、苗を育てる「苗代作り」、田に水を張って平らにする「代掻き(しろかき)」などが行われます。
多くの準備工程を経て行われる田植えは、すでに二十手以上を完了させた段階にあります。ここから本格的な屋外での栽培が始まります。
技術がつなぐ、日本の風景
かつて行われていた手植えは、今は神事や行事としてはありますが、
多くは機械植えへと技術革新が進みました。
田植えの風景も時代とともに変化していますが、水面に苗が並ぶ様子に心が和み、
じっくり見入ってしまうのは今も昔も変わりません。
以前、地元の農家の方に「苗をまっすぐ植えるのは、プロの技ですね」とお話ししたことがあります。
すると、「今はGPSが付いているから、初心者でもまっすぐ植えられるんだよ」と教えてくださいました。
美しい田園風景は、古くからの習慣だけでなく、現代の技術進歩にも支えられながら守られています。
秋に黄金色の穂を揺らす日まで、八十八の手間は続きます。
今の時期にしか出会えない、景色から感じる「和」でした。
松阪支部 松井順子


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