清明

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清明の季節と旬の食材を楽しむ和の知恵

春爛漫、若葉が輝く清明の季節がやってまいりました。
「清浄明潔」を略した「清明」という言葉には、深い意味が込められています。
江戸時代の暦便覧には「万物ここに至りて皆潔斎(けっさい)にして清明なり」と記されています。

木々の若葉が一斉に芽吹き、溢れるように花が咲き誇る今。
やわらかな春風と明るい日差しに包まれ、万物が清らかに明るく感じられるこの季節に、旬の食材を味わう喜びをご紹介します。

春の香りを届ける山の贈り物

筍(たけのこ)

イネ科マダケ属の筍は、原産地を中国とし、1740年頃に琉球から薩摩を経て江戸へと伝来しました。古事記にも「筝(たかむな)」という記述があり、古くから日本人に親しまれてきた食材です。

栄養価はそれほど高くありませんが、食物繊維「セルロース」が豊富に含まれています。
様々な調理法で楽しめる、春の代表的食材です。

筍の種類(出回り目安順)

孟宗竹:一般的に流通している筍。4月が旬。
姫竹:チシマザサという笹の筍で、20㎝ほどの細長い形状。5月中旬頃に出回ります。
淡竹:あくが少なくシャキッとした食感が特徴。赤紫色で細い形状。5月中旬頃に出回ります。
真竹:表面に黒い斑点が特徴で、孟宗竹よりスマートな形。5月下旬頃に出回ります。

筍の漢字の秘密

筍は「竹」に「旬」と書きますが、なぜ「旬」なのでしょうか。
実は「旬」の読み方によって意味が変わります。
「しゅん」と読めば食べ物の最も美味しい時期を、「じゅん」と濁れば10日を意味します。
筍の場合は「じゅん(10日)」の意味で使われており、その短い収穫期間を表しているのです。

出会い物の妙味

筍料理の代表格「若竹煮」の名前は、若布(わかめ)の「わか」と筍の「たけ」からきています。
実は、筍と同じく若布の旬も春。
この時期に特別においしい二つの食材を組み合わせたのが「わかたけに」です。

山の幸と海の幸、二つの食材を単体で食べるよりも合わせて調理した方が美味しくいただけるものを「出会い物」と言います。
自然の恵みが出会うことで生まれる、味わいの深まりをぜひご堪能ください。

大地の恵みが詰まった根菜の王様

牛蒡(ごぼう)

ユーラシア大陸北部が原産の牛蒡は、平安時代に中国から薬草として渡来しました。
日本以外ではほとんど食用とされていない貴重な食材です。

牛蒡に含まれるイヌリンという食物繊維には、腸内の有害物質を体外に排出する働きがあります。整腸作用に優れ、大腸がんなどの生活習慣病予防にも効果的です。

牛蒡の種類

一般的な「ごぼう」
大浦ごぼう:成田山新勝寺に奉納するために契約栽培され、市場には出回らないようです。
市場で見る太いごぼうは「大浦太ごぼう」と呼ばれます。
滝野川ごぼう
新ごぼう
堀川ごぼう

春の喜びを告げる緑の使者

さやえんどう

中央アジアから中近東地域が原産のさやえんどうは、8世紀頃に中国から日本に渡来し、江戸時代に栽培が始まりました。

えんどうは大きく分けて、若いさやを食用とする「さやえんどう」(代表は絹さや)、未熟な豆を利用する「実えんどう・グリーンピース」、そして完熟した豆を乾燥させて利用する「えんどう」(若芽は豆苗)があります。

カリウム、カルシウム、ビタミンCが豊富で栄養価の高い野菜です。調理の際は、火を通しすぎると色も食感も損なわれるため、短時間で仕上げるのがコツです。

爽やかな味わいの洋野菜

レタス

地中海沿岸から西アジアが原産のレタスは、和名では「チシャ」と呼ばれます。現在のようなレタスが日本に入ってきたのは、明治時代に洋食文化と共にでした。

水分が95.9%と多いレタスですが、生食の場合はビタミンC、カロテン、カリウム、鉄、亜鉛などの栄養素が摂取できます。また、食物繊維をたっぷり摂取するには加熱調理もおすすめです。

レタスの種類

レタスは大きく4つに分類されます:

結球レタス:一般的な玉レタス
ロメインレタス:ギリシャのコス島原産の立ちレタス
サニーレタス:葉先がカールした非結球の葉レタス
茎レタス:「山くらげ」は茎レタスの茎を縦に裂いて乾燥させたもの

その他、エンダイブ、グリーンカール、サラダ菜、サンチュ、ブーケレタスなども広義ではレタスに含まれます。

まとめ

清明の季節に旬を迎えるこれらの食材は、私たちの食卓に彩りと栄養をもたらします。季節の移ろいを感じながら、自然の恵みを味わう和食の知恵。

それは先人から受け継がれてきた大切な文化です。

明日の食卓に、ぜひこれらの春の恵みを取り入れてみませんか?
四季を愛でる心と共に、和食の豊かな魅力を再発見していただければ幸いです。

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この記事を書いた人

平沼 芳彩のアバター 平沼 芳彩 箸文化研究家・礼法講師・和食文化継承リーダー

お箸は、自然の恵みを私たちの心と身体へと橋渡しする、命を繋ぐ大切な道具。日本人が一生を通して毎日使う最も身近な食具だからこそ、その価値を見つめ直したい。
四季の移ろいを感じる歳時記とともに、日本の豊かな生活文化や箸にまつわる知恵を発信します。

2018年「かながわシニアビジネスグランプリ」ベストプラン賞受賞。
NPO法人みんなのお箸プロジェクト副理事長として、2,000人超の子どもや保育士を指導。『発達に合わせて伝える 子どものための食事マナー』を監修。NHK Eテレ・フジテレビ・ラジオなど多数のメディアに出演し、新聞、雑誌、ウェブにも掲載。

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