夏の終わりを告げる昆布漁の季節
8月23日は二十四節気の「処暑」。
文字通り暑さの峠を越す頃とされ、北海道では夏の風物詩である昆布漁がいよいよ終盤を迎えています。
早朝の海に響く漁師たちの声、岸辺に並ぶ昆布干し場の風景は、北海道の夏が終わりに近づいていることを教えてくれます。
和食文化を支える北海道の昆布
昆布は和食文化にとって欠かすことのできない食材です。
出汁の素材として、また昆布巻きや佃煮として、私たちの食卓を豊かに彩ってきました。
国内昆布漁獲量の実に9割が北海道産です。
一方で消費量を見ると、富山県が全国で際立って多いという興味深い現象があります。
この背景には、江戸時代から続く壮大な物流の歴史が隠されています。
「昆布ロード」が紡いだ文化の架け橋
江戸時代以降、北前船によって北海道の昆布は本州各地へと運ばれました。
この航路は「昆布ロード」と呼ばれ、富山を経由して薩摩や琉球、さらには中国まで広がっていったそうです。
富山の商人たちは昆布を仕入れ、加工・販売することで大きな富を築きました。
これが現在でも富山県の昆布消費量が多い理由なのですね。
昆布ロードは単なる商品流通にとどまらず、文化や技術の交流の場でもありました。
暑さを和らげる昆布の力
漢方の世界では、昆布には「熱を冷ます」働きがあるとされています。
まだまだ暑さの続くこの時期にはまさにぴったりの食材といえます。
昆布に豊富に含まれるミネラルは、汗で失われがちな栄養素を補給してくれる効果も期待できます。
迫りくる危機〜失われゆく昆布の多様性
しかし、この貴重な昆布に今、深刻な危機が迫っていることをご存知でしょうか。
道内の昆布生産量は、この20年ほどで驚くべきことに半減してしまいました。
その背景には複合的な要因があります:
- 漁業者の高齢化:後継者不足が深刻化
- 海水温上昇:地球温暖化による海洋環境の変化
- ウニの食害:生態系バランスの崩れ
- 海洋汚染:プラスチック問題なども影響
さらに衝撃的なのは、北海道大学の研究グループによる予測です。
北海道周辺に分布する11種類の昆布のうち、いくつかの種は2090年までに日本の海域から完全に姿を消す可能性があるというのです。
未来への責任〜今、私たちにできること
和食文化の根幹を支える昆布を未来の世代に受け継ぐために、私たちには何ができるでしょうか。
地球温暖化対策はもちろん重要ですが、それだけではありません。
昆布の価値を正しく理解し、適正な価格で購入することで生産者を支援する。
昆布を使った料理を日常的に取り入れ、その文化を次世代に伝える。
こうした一人ひとりの小さな行動が、大きな変化を生み出すのではないでしょうか。
処暑の季節に思いを馳せる昆布の物語。
それは自然の恵みを受け継ぐことの大切さ、そして私たちが直面している環境問題の深刻さを物語っています。
北海道在住 美保


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