【霜降(そうこう)】秋深き 隣は何を する人ぞ

二十四節気の「霜降(そうこう)」は、晩秋から初冬へと移り変わるころ。
朝晩の冷え込みが増し、草木に霜が降りて白く輝きます。
自然界が冬支度を始めるように、私たちの暮らしも少しずつ整える時期を迎えます。

「霜」という字には、“静かに降り積もる”という意味があります。
慌ただしい日常の中でも、立ち止まって息を整え、心を鎮める時間を大切に――
そんな思いを、この季節の言葉が教えてくれるようです。

この時期に思い出したいのが、松尾芭蕉の一句。

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秋深き 隣は何を する人ぞ

この句は、芭蕉が旅の途中、大津で詠んだと伝えられています。
秋が深まり、あたりが静まりかえった頃、
ふと「隣の人は何をしているのだろう」と思いを巡らせた――
その情景には、孤独ではなく、静寂の中にある“人へのまなざし”が感じられます。

この一句には、自然と人とが共に生きる日本人の感性、
そして季節のうつろいの中で他者を思う“間(ま)の文化”が息づいています。
それはまさに、和食の心や礼の所作にも通じるものです。

朝の食卓でお箸を揃え、器をそっと置く。
その小さな所作にも、相手や自然への感謝が宿ります。
忙しさの中にも、ひと呼吸の余白を持つこと。
それこそが、霜降の頃に見つめ直したい“暮らしの礼”なのかもしれません。

霜降の朝、霜の白さに静かな美を見出しながら、
今日の一膳に、心のぬくもりを添えてみませんか。

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この記事を書いた人

平沼 芳彩のアバター 平沼 芳彩 箸文化研究家・礼法講師・和食文化継承リーダー

お箸は、自然の恵みを私たちの心と身体へと橋渡しする、命を繋ぐ大切な道具。日本人が一生を通して毎日使う最も身近な食具だからこそ、その価値を見つめ直したい。
四季の移ろいを感じる歳時記とともに、日本の豊かな生活文化や箸にまつわる知恵を発信します。

2018年「かながわシニアビジネスグランプリ」ベストプラン賞受賞。
NPO法人みんなのお箸プロジェクト副理事長として、2,000人超の子どもや保育士を指導。『発達に合わせて伝える 子どものための食事マナー』を監修。NHK Eテレ・フジテレビ・ラジオなど多数のメディアに出演し、新聞、雑誌、ウェブにも掲載。

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