〜親子で味わう、一汁一菜のあたたかさ〜
朝晩の空気がひんやりと澄んでくる季節。
「今日はあったかい汁ものが飲みたいな…」と思う日も増えてきました。
そんな寒い日にこそ食卓に迎えたいのが、神奈川県の郷土料理 「けんちん汁」 です。
大根・にんじん・ごぼうなどの根菜をたっぷり使い、じっくり煮込むこの一椀は、体の芯からぽかぽかと温めてくれる滋味深い味わいが魅力です。
目次
けんちん汁のルーツは「鎌倉の精進料理」
けんちん汁の発祥については、鎌倉の禅寺 建長寺(けんちょうじ) に由来するという説がよく知られています。
建長寺で作られていた精進料理「建長汁(けんちょうじる)」が転じて、
いつしか「けんちん汁」と呼ばれるようになったのだとか。
精進料理では肉や魚を使わず、野菜のおいしさを最大限に引き出すのが基本。
そのため豆腐は炒めず、手で軽く崩してそのまま加えるのが伝統的な作り方とされています。
崩れた豆腐も立派な食材として生かしきる、禅の“もったいない”精神が息づいています。
質素ながらも心と体にしみわたる――
そんな和食の原点が感じられるのが、けんちん汁です。
けんちん汁の基本レシピ(豆腐は炒めない精進風)
■ 材料(4人分)
- 大根…1/3本
- にんじん…1/2本
- ごぼう…1/2本
- 里いも…2〜3個
- こんにゃく…1/2枚
- 木綿豆腐…1/2丁
- ごま油…大さじ1
- だし汁…4カップ
- しょうゆ…大さじ2
- 塩…少々
■ 作り方
- 野菜は食べやすい大きさに切り、ごぼうはささがきにして水にさらす。
- 鍋にごま油を熱し、大根・にんじん・ごぼう・里いも・こんにゃくを炒める。
- だし汁を注ぎ、野菜がやわらかくなるまで煮込む。
- 木綿豆腐を手でそっと崩しながら加える。
- しょうゆと塩で味をととのえて完成。
豆腐をあとから加えることで、汁にやさしいコクが生まれ、精進風の素朴な味わいになります。
「一汁一菜」がもたらす、食卓の豊かさ
けんちん汁に炊きたてのごはんと季節のお漬物を添えるだけで、
昔ながらの 一汁一菜の献立が完成します。
一汁一菜は、
「汁物ひとつ+ごはんひとつ」という最も基本的な食事のかたち。
素材を活かし、無駄なくいただくという和食の精神そのものが息づいています。
親子で野菜を切る音、だしの香り、豆腐を崩すやわらかい感触、
そんな台所の時間そのものが、「食べること=生きること」を自然に学ぶ大切なひとときになります。
冷え込む日の夕暮れに、湯気の向こうから家族の笑顔がこぼれるような。
けんちん汁は、そんな温かい食卓をつくってくれる一椀です。
本部 万櫻


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