夏の涼と母の味 〜キュウリの冷たいお味噌汁に込められた思い出〜

風鈴の音色が聞こえてくると、ふと思い出す母の味があります。
昭和3年生まれの母は、決して料理上手とは言えませんでしたが、暑い夏の日になると必ず作ってくれる特別な一品がありました。それは、キュウリの冷たいお味噌汁です。

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シンプルだからこそ心に残る味

作り方はとてもシンプル。麦味噌を冷たい出汁でとき、薄く切ったキュウリとたっぷりのすりごまを加えるだけ。
氷を浮かべて冷やしたお椀に注がれると、見た目にも涼しげで、どこか懐かしい香りが立ちのぼります。

一口すすると、キュウリのシャキシャキとした歯ごたえと、ごまの香ばしさが味噌のやさしい風味に重なり合い、体がすっと涼しくなるのを感じました。
それは、まさに夏の暑さを忘れさせてくれる魔法のような一杯でした。

縁側で過ごした夏の記憶

夕立のあとの縁側で、風鈴の音を聞きながらその一杯をすする。
母の背中を見ながら過ごしたあの夏の日々は、今も私の心の奥深くに刻まれています。

母は料理が得意ではなかったかもしれませんが、この一杯には愛情がたっぷりと込められていました。
暑さで食欲がない時でも、この冷たいお味噌汁だけは不思議と喉を通り、心も体も癒されたものです。

受け継がれる母の味

季節がめぐるたび、あの味を思い出しながら、自分でも作ってみます。
同じ材料で同じように作っても、母の味には及ばないのが不思議です。
きっと、母の手から伝わる温もりや、あの日の記憶が味に深みを加えていたのでしょう。

それでも、夏の訪れとともに、母のぬくもりとやさしい味わいが食卓にそっとよみがえります。
そして、この味を次の世代にも伝えていきたいと思うのです。

夏の贈り物

キュウリの冷たいお味噌汁は、単なる料理以上の意味を持っています。
それは、母から娘へと受け継がれる愛情の形であり、夏の暑さを乗り切る知恵であり、心を癒す特別な贈り物なのです。

今年の夏も、あの味を再現しながら、母への感謝の気持ちを込めて一杯のお味噌汁を作りたいと思います。
風鈴の音色とともに、母の記憶を大切に紡いでいこうと思います。


暑い夏の日には、ぜひこの冷たいお味噌汁を試してみてください。
きっと、心も体も涼しくなることでしょう。



藤沢支部 いずみ

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