小暑のこころ 〜涼を呼ぶ夏の礼法〜

暦のうえでは、いよいよ夏の暑さが本格的になり始める頃ですが、すでに真夏のような陽気が続いていますね。

そして今日は七夕。

この行事は、中国の「乞巧奠(きっこうでん)」という宮中儀式に由来し、古来より、技芸の習熟を願い静かに祈りを捧げた、宮中の清らかな行事です。

日本では平安時代に伝わり、やがて短冊に願いをしたためる今のかたちになりました。与謝野晶子の一句をご紹介します。

笹の葉に 星のこゑする 七夕夜

心の奥にそっと風が通るようなひとときになりますように。

目次

「五色に込めるこころ」

七夕に願いを込めて短冊を書く。

その色に意味があることをご存知でしょうか?

五色の短冊は、自然界の調和を表す陰陽五行思想に基づいています。

  • 青(緑)…仁:思いやりと成長のこころ
  • ……礼:感謝と敬意を忘れない心
  • ……信:まっすぐに人を信じる心
  • ……義:正しいことを貫こうとする心
  • 黒(紫)…智:学びを深める心

もともとは、短冊ではなく「梶の葉(かじのは)」に願いを託していたと伝えられています。梶の葉は、表面に細かい毛が生えていて墨がにじみにくく、神に言葉を伝える葉として重宝されてきた神聖な植物です。

墨で書くだけでなく、そっと文字を削って祈りを刻んだとも言われています。

短冊に願いを書くということは、ただのお願いではなく、自分の心とそっと向き合うひとときでもあります。

どの色に、どんな言葉を込めるか。

子どもも大人も、それぞれの「こうありたい」を見つめ直す、ささやかで大切な時間です。

夏の涼を呼ぶ心遣い

小暑の頃は、暑さが日に日に増してまいります。このような季節だからこそ、おもてなしの心に涼やかさを添えたいものです。

お客様をお迎えする際には、玄関先に打ち水をし、すだれや風鈴で涼を演出いたします。お茶席では、青竹の花入れに夏の花を一輪。白磁の器に冷茶をお出しして、目にも涼やかなひとときを。

また、この時期のお便りには「小暑の候」「向暑の折」といった時候の挨拶を用い、相手の健康を気遣う一言を添えることで、文字からも涼風が感じられるような配慮を心がけましょう。

暑い日々が続きますが、昔から受け継がれてきた季節の智恵と、相手を思いやる心遣いで、この夏も美しく過ごしてまいりましょう。

むすび

小暑から大暑へと向かうこの時期、自然の移ろいとともに、私たちの心も静かに整えていきたいものです。

七夕の短冊に込めた願いが、きっと天の川を渡って届くことでしょう。

どうぞ皆さまも、五色の短冊に想いを託してみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

平沼 芳彩のアバター 平沼 芳彩 箸文化研究家・礼法講師・和食文化継承リーダー

お箸は、自然の恵みを私たちの心と身体へと橋渡しする、命を繋ぐ大切な道具。日本人が一生を通して毎日使う最も身近な食具だからこそ、その価値を見つめ直したい。
四季の移ろいを感じる歳時記とともに、日本の豊かな生活文化や箸にまつわる知恵を発信します。

2018年「かながわシニアビジネスグランプリ」ベストプラン賞受賞。
NPO法人みんなのお箸プロジェクト副理事長として、2,000人超の子どもや保育士を指導。『発達に合わせて伝える 子どものための食事マナー』を監修。NHK Eテレ・フジテレビ・ラジオなど多数のメディアに出演し、新聞、雑誌、ウェブにも掲載。

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