アイヌの年越し ― 自然のめぐりとともに生きる知恵

目次

「イランカラプテ」

― 北の大地に息づく、祈りと食の文化 ―

「イランカラプテ」。
これは北海道に先住するアイヌ民族の挨拶の言葉で、「あなたの心にそっと触れさせてください」という意味をもつとされています。
単なる挨拶ではなく、相手への敬意と、心を通わせようとする姿勢を表す言葉です。

年の瀬を迎えるこの時季、私たちは改めて「人と人」「人と自然」との関係に思いを馳せる機会を迎えます。


北の大地に根づいた年の迎え方

北海道では、大晦日からおせち料理を食べる家庭が多く見られます。
この習慣は、江戸時代から明治期にかけて、本州各地から移り住んだ人々が持ち込んだ生活文化が、寒冷な気候や土地の風土と結びつきながら定着したものと考えられています。

一方で、アイヌの人々には本来「正月」という概念はありませんでした。
彼らは暦よりも自然の巡りを重んじ、季節の移ろいの中で暮らしを営んできたのです。


自然と共に生きる食のかたち

アイヌの食文化では、粟や稗などの雑穀、山や川の恵みを活かした食が中心でした。
昆布だしで野菜を煮た料理や、保存食としての乾物は、厳しい自然環境の中で生き抜く知恵の結晶です。

食事の前には、カムイ(神々)への感謝を捧げ、
命を「いただく」ことへの畏敬の念が込められていました。
それは、食べるという行為を単なる栄養摂取ではなく、自然との対話として捉える文化でもあります。


現代に受け継ぐ「いただきます」の心

私たちが日常的に口にする「いただきます」「ごちそうさま」という言葉には、
自然の恵み、作り手の労、そして命への感謝が込められています。

便利で豊かな時代だからこそ、
こうした言葉の意味をあらためて見つめ直すことは、
食と向き合う姿勢を整え、暮らしを丁寧にすることにつながるのではないでしょうか。

年の終わりに、静かに心を整えながら――
自然とともに生きてきた人々の知恵に思いを寄せてみたいものです。

アシリパ アウク ワオンカミアンナ
(どうぞ、よいお年をお迎えください)

北海道在住 美保

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次