夏の味覚「明石だこ」と半夏生の風習

2025年6月27日2025年6月28日

関西の誇る海の幸で季節を感じよう

夏の関西といえば、何を思い浮かべますか？
祭囃子の音色、蝉の鳴き声、そして食卓を彩る季節の味覚たち。
中でも「麦わらダコ」と「祭りハモ」は、関西人にとって欠かせない夏の風物詩です。

特に全国に名を馳せているのが、兵庫県の明石で水揚げされるブランドマダコ。
その美味しさの秘密と、古くから伝わる興味深い風習について、今回はご紹介したいと思います。

明石だこの旬は6月から8月にかけて。
この時期のタコは産卵を控えて体内に栄養をたっぷりと蓄えるため、身が引き締まり、甘味や旨味が一層際立つのが特徴です。

明石海峡周辺は潮流が非常に速く、そこで育つタコたちは流されないように必死に踏ん張って生活しています。
その結果、足が太く短く発達し、筋肉質で歯ごたえのある独特の食感が生まれるのです。
また、砂混じりの海底にはカニやエビなどタコの好物が豊富で、昔から良質な漁場として知られてきました。

タコの魅力は、その調理法の多様性にもあります。
柔らか煮でほっこりと、酢の物でさっぱりと、天ぷらでカリッと香ばしく。
タコ飯にして旨味を米に染み込ませたり、干しダコにして保存性を高めたり、新鮮なタコぶつで素材の味を堪能したり。

そして忘れてはならないのが、関西のソウルフード・明石焼き（たこ焼き）です。
外はふわふわ、中はとろとろの生地に、プリプリのタコが絶妙にマッチした逸品は、関西人の心を掴んで離しません。

「捨てるところがほとんどない」といわれるタコは、無駄を嫌う関西人の気質にもぴったり。
まさに関西の食文化を象徴する食材といえるでしょう。

そんなタコと切っても切れない関係にあるのが「半夏生（はんげしょう）」という季節の行事です。
夏至から数えて11日目にあたる雑節で、2025年は7月1日がその日にあたります。

関西地方では古くから、この半夏生の日までに田植えを終え、植えた稲がタコの足のようにしっかりと大地に根付くよう願いを込めて、タコを食べる風習が受け継がれています。
農業と海の恵みが織りなす、なんとも美しい文化的つながりですね。

しかし近年、明石だこの漁獲量減少が報告されています。貴重な海の資源を守るため、地域では稚ダコの放流事業や漁獲ルールの見直しなど、持続可能な漁業を目指した様々な取り組みが進められています。

私たち消費者も、この取り組みを理解し、自然の恵みに感謝しながら味わうことが大切です。

自然の命をいただきながら、古くから伝わる風習や季節の移ろいを感じる。
そんな日本の美しい文化を、食を通じて体験してみませんか。

今年の半夏生には、ぜひ明石だこを味わって、関西の夏を存分に楽しんでください。
きっと、いつもより特別な食事になることでしょう。

神戸支部　靖子

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