秋分の日は、古来より人々の暮らしと深く結びついてきました。
戦前は「秋季皇霊祭」と呼ばれ、宮中で歴代天皇や皇族の霊をまつる祭祀の日。
戦後の昭和23(1948)年に「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ」国民の祝日として改められ、今も「お彼岸の中日」としてご先祖さまに感謝を捧げる日として続いています。
この日を境に、昼と夜の長さが入れ替わり、夜が次第に長くなることで、秋の深まりを実感します。
自然のリズムに寄り添い、季節の移ろいを肌で感じる感性は、和食文化の根底にも流れています。
彼岸花と秋茄子
秋分のころに咲く「彼岸花」は、まるで時を計ったかのように赤い花を咲かせます。
その姿から「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」とも呼ばれ、サンスクリット語で「天界に咲く花」を意味します。
毒を持つ一方で、昔は非常時に食用にされたという知恵も残されています。
また、食卓に欠かせない旬の味覚として「秋茄子」があります。
“秋茄子は嫁に食わすな”ということわざは有名で、美味しさを惜しむ意地悪な意味と、体を冷やすため大事な嫁を気遣う意味の両方が語り継がれてきました。
ことわざの裏には、食材の特性を踏まえた暮らしの知恵が隠れています。
稲穂と新米
秋分はまた、稲が黄金色に輝き、豊穣を告げる季節です。
日本人が稲を「命の根」として大切にしてきたのは、日々の食卓の中心にご飯があるからこそです。
新米に箸を入れるときは、まず香りを楽しみ、一口目をゆっくりと噛みしめるのが作法とされます。
その所作には、自然と人の営みへの感謝が込められています。
食卓に寄せて
秋分の日は、ご先祖さまを思い、自然の恵みに感謝を伝える節目の日。
ご家族での食卓でも、旬の野菜や新米を味わいながら、日本人が育んできた知恵や文化をあらためて感じ取ってみてはいかがでしょうか。


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