【立冬】冬の始まりと和食の心

朝、窓を開けると冷たく澄んだ空気が頬を撫でる。

ふと吐いた息が白く染まり、ああ、冬が来たのだと実感する季節になりました。

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冬の気配が立つ頃

立冬「冬の気配が立つ」と書くこの言葉には、自然界が静かに冬支度を始める様子が表れています。
暦の上では今日から立春まで、長い冬の始まりです。

「冬」という言葉の響きには、日本人が重ねてきた季節への想いが込められています。
年が暮れていく季節を意味する「経ゆ(ふゆ)」、寒さが勢いを増す「振ゆ(ふゆ)」、そして「冷ゆ(ひゆ)」が転じたという説。言葉の響きひとつにも、季節のうつろいを繊細に感じ取ってきた先人たちの感性が息づいているのですね。

「和食月間」に想うこと

今月11月は「和食月間」。2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されてから、今年で12年目を迎えました。

“自然の恵みに感謝し、命をいただく”──

この和食の精神を、次の世代へつなぐ大切な節目の年でもあります。

和食と切り離せない存在が「箸」です。
食材をそっとつまみ上げ、器を丁寧に扱うその所作には、食を通して自然と調和しながら生きてきた日本人の美意識が息づいています。
箸を持つたびに、私たちは無意識のうちに、その精神に触れているのかもしれません。

季節を味わう──冬瓜と新蕎麦

「冬」という字を持つ野菜「冬瓜(とうがん)」は、実は夏が旬の食材です。
不思議に思われるかもしれませんが、
名前の由来は、丸ごと保存すれば冬までもつことから。かつては貴重な保存食として重宝されました。

ビタミンCが豊富で風邪予防にも役立ちますが、身体を冷やす性質があるため、この季節はじっくり温かく煮込んでいただくのがおすすめです。
出汁の旨味を含んだとろりとした食感は、冷えた身体をやさしく温めてくれます。

そして今の時期、もうひとつ楽しみたいのが「新蕎麦(しんそば)」。
夏に蒔かれた蕎麦が秋の陽を受けて実り、11月に香り高く収穫されます。
産地や品種によって風味はさまざまですが、紅葉を眺めながら新蕎麦をたぐり寄せるひとときは、まさに日本の秋の贅沢というものでしょう。

自然の恵みと向き合う暮らし

季節の”走り・旬・名残”を味わう──。

その食材が最も美味しい瞬間を知り、その命に感謝しながらいただく。
こうした積み重ねが、和食文化を支える大切な心なのだと、立冬を迎えたこの日にあらためて感じます。

冬の足音が聞こえ始めた今、温かい一椀に込められた自然の恵みと、それをいただく喜びを、静かに噛みしめたいと思います。

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この記事を書いた人

平沼 芳彩のアバター 平沼 芳彩 箸文化研究家・礼法講師・和食文化継承リーダー

お箸は、自然の恵みを私たちの心と身体へと橋渡しする、命を繋ぐ大切な道具。日本人が一生を通して毎日使う最も身近な食具だからこそ、その価値を見つめ直したい。
四季の移ろいを感じる歳時記とともに、日本の豊かな生活文化や箸にまつわる知恵を発信します。

2018年「かながわシニアビジネスグランプリ」ベストプラン賞受賞。
NPO法人みんなのお箸プロジェクト副理事長として、2,000人超の子どもや保育士を指導。『発達に合わせて伝える 子どものための食事マナー』を監修。NHK Eテレ・フジテレビ・ラジオなど多数のメディアに出演し、新聞、雑誌、ウェブにも掲載。

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